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留学生の就職先を拡大! 接客業などで在留資格を認める
法務省は2019年5月30日付けで法務大臣告示を改定し、在留資格「特定活動」(46号)を新設しました。これは日本の大学や大学院を卒業・修了した留学生の就職先を拡大するもので、日本語能力検定「N1」に合格している者などが対象となります。これまで認められなかった飲食店や小売店といった日本語を主体的に使う接客業などで働くことができるようになります。
「特定技能」のような期限は設けられていない
「特定技能」は最長5年間しかその活動は認められませんが、「特定活動」(46号)にはそのような制限はなく、何度でも更新が可能です。現行の「技術・人文知識・国際業務」等と同じイメージです。
「特定技能」のような受け入れ枠制限はありません。
「特定技能」では法案審議において与野党が激しく争い受入れ制限を設けたわけですが、この「特定活動」46号にはそのような制限は設けられておりません。潜在的なニーズは巨大なものがあるので、10年以内に50万〜100万人規模になりそうな予感がします。
「特定技能」のような各業種ごとの試験に合格する必要がない
必要なのは日本語能力検定N1合格だけです。大学入学前の日本語学校在学中に合格している方も多いとは思いますが、大学卒業後に合格したものでも構いません。
「特定技能」のような管理上の制約がない
「特定技能」のような登録支援機関の関与も必要ありません。「技術・人文知識・国際業務」等と同じく、基本的には日本人従業員と同程度の管理体制で足ります。
家族が帯同できる
「特定技能」(46号)の世帯主と同居して扶養される配偶者又は子については、同じく「特定活動」をもって滞在が可能です。したがって「特定技能」や「技能実習」のように家族の帯同が許されなかったり、婚姻の制約を受けたりという人権上の不当な扱いを受けることはありません。なお、配偶者や子についても資格外活動許可によりアルバイトも認められます(週28時間以内の包括許可)
永住申請が可能
「技術・人文知識・国際業務」等と同じく、条件を満たせば永住申請が可能です。ポイント加算のある大学院を修了した20代の方とかであれば、日本語能力検定の加算もあるので、就職した時点で初任給がそれほど高くなくても(少なくとも年収300万円以上は必要ですが)高度人材ポイント80点以上で永住申請ができる人もいそうです。
報酬の制限
「技術・人文知識・国際業務」等と同じく日本人と同等以上の報酬を得るものであることという条件が付きます。なお、雇用形態として常勤の職員である必要があり、パート・アルバイトは不可です。
専門学校卒や短大卒は認められない
日本の大学(専門職大学含む)及び大学院(専門職大学院含む)を卒業した者でなくてはなりません。したがって高等専門学校や専門学校の高度専門士課程も認められません。
卒業後に既に帰国している者も対象
「特定活動」告示に列挙されているということは、在留資格認定証明書交付申請により海外から招へいすることが可能です。
転職が容易
転職の可否ついても「技術・人文知識・国際業務」と同じようなイメージです。基本的に自由に転職できますので、条件の良い都市部に人材が集中するのではないかと予想されます。なお、大学を出て現在はエンジニアをしているような人であっても、今後は居酒屋やカラオケ店に転職するようなことも起こり得るでしょう。もちろん在留資格も「技術・人文知識・国際業務」から「特定活動」(46号)への変更も認められますし、その逆のパターンも今後は出てくるでしょう。
転職の際の注意点としては、本在留資格は活動先の機関が指定されているので、転職した場合は在留期間の長さにかかわらず速やかに在留資格変更許可申請を行い、新たなな活動先機関の指定を受ける必要があります。
対象職種が幅広い
この在留資格の対象となる職種は飲食・小売り等の接客業に限らず、「日本語を用いた円滑な意思疎通要する業務」全般が該当することになります(風俗関係業務は除く)。ただし、業務全般が純然たる単純業務だけというのではだめで、業務の中に大学で習得した学術上の素養を背景とした一定水準以上の業務がふくまれていること、とされます。
<出入国在留管理庁が示した職種例>
ア 飲食店に採用され、店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行うもの(それに併せて日本人に対する接客を行うことを含む)。ただし厨房での皿洗いや清掃に「のみ」従事することは認めない。
イ 工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。ただし、ラインで指示された作業に「のみ」従事することは認めない。
ウ 小売業において、仕入れや商品企画等と併せ、通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客販売業務を行うことを含む)。ただし、商品の陳列や店舗の清掃に「のみ」従事することは認めない。
エ ホテルや旅館において、通訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業を行うものや、外国人客への通訳(案内)、他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客を行うことを含む)。
オ タクシー会社に採用され、観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ、自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(それに併せて、通常のタクシードライバーとして乗務することを含む)。
カ 介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、外国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り、介護業務に従事するもの。ただし施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認めない。
上記ア〜カを見るとおり、一定程度の外国人利用者のいるサービス業での顧客対応や、アルバイトや技能実習生等の外国人従業員を要する製造業等での現場リーダー的な業務はほぼ全て該当すると思われます。また、例には挙げられておりませんが、大学で習得した学術上の素養を背景とする業務であれば、必ずしも外国語を用いるものでなくても認められるはずです(例えば大学で経営学を専攻したものが、自ら営業活動を行う宅配便のセールスドライバーになることなどは認められるのではないかと考えられます。)。
当事務所では2019年7月に許可第1号が出ています。某ミニスーパー本部に総合職採用され、エリアマネージャーに昇格するまでの数年間を店舗に勤務するという内容でした。大手企業でしたが思っていたより業務内容や時間配分の詳細な説明を求められ、ちょっと癖のある申請だと感じました。今後入管側の審査基準が定まってくれば今より簡略化されるとは思いますが、現時点では注意が必要です。
甲斐国際行政書士事務所
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